睡眠を整えるには何から始める?睡眠時間・休養感・職場でできる対策

睡眠を整えるときは、「何時間眠るか」だけでなく、「眠って休養がとれた感覚があるか」を一緒に見ることが大切です。厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保し、高齢者は床上時間が8時間以上にならないことを目安にしながら、睡眠休養感を高める生活環境を整えることが示されています。

この記事では、忙しい働く世代や健康経営に取り組む企業担当者に向けて、睡眠不足の考え方、睡眠の質を下げやすい習慣、職場でできる支援、医療機関へ相談した方がよいサインを整理します。内容は一般的な健康情報であり、個別の診断や治療方針は医師の診察で判断されます。

睡眠は「時間」と「休養感」の両方で見る

睡眠時間と休養感を記録するノートと時計

睡眠の状態を考える最初のポイントは、睡眠時間と睡眠休養感を分けて確認することです。睡眠時間は、実際に眠る機会をどのくらい確保できているかを示します。一方、睡眠休養感は、朝起きたときに「眠って休めた」と感じられるかどうかを示します。

たとえば、平日は5時間台の睡眠が続き、休日に長く寝て帳尻を合わせている場合、日中の眠気や集中力低下が出やすくなることがあります。反対に、布団に長く入っていても、夜中に何度も目が覚める、いびきや無呼吸を指摘される、朝から疲れているといった状態では、睡眠の質に問題が隠れている可能性があります。

厚生労働省のガイドでは、睡眠不足や睡眠の問題が慢性化すると、肥満、高血圧、2型糖尿病、心疾患、脳血管障害などのリスク上昇や、日中の眠気・疲労、注意力や判断力の低下と関連することが整理されています。ただし、睡眠と病気の関係には生活習慣、年齢、既往歴、勤務形態など多くの要因が関わるため、「眠れないから必ず病気になる」と単純に考える必要はありません。まずは自分の睡眠パターンを見える化し、改善できる環境や習慣から調整することが現実的です。

成人・高齢者・こどもで必要な睡眠は違う

年代ごとの睡眠の違いを表す本と時計と眼鏡

必要な睡眠時間は年代によって変わります。成人では6時間以上を目安として、日中に強い眠気や疲労が出ない程度の睡眠時間を確保することが基本です。高齢者では、長く床に入るほど睡眠が浅くなり、中途覚醒が増えることがあるため、床上時間が長くなりすぎないように調整する視点も必要です。

こどもでは、成人より長い睡眠時間が必要です。睡眠は成長、学習、情緒の安定に関わるため、夜更かしを前提にした生活ではなく、朝の起床時刻から逆算して就寝時刻を整えることが大切です。家庭内で大人の帰宅やスマートフォン利用に合わせて夜型になっている場合は、照明、食事、入浴、画面を見る時間を含めて生活全体を見直す必要があります。

一方で、推奨時間はあくまで目安です。体質、疾患、服薬、育児、介護、交替制勤務などによって、理想通りに眠れない時期もあります。大切なのは、数字だけを追いかけて不安を強めることではなく、日中の眠気、仕事や学業への影響、気分の落ち込み、頭痛、朝のだるさなどを合わせて確認することです。

睡眠の質を高める生活習慣は朝から始まる

朝の光と朝食と歩く準備を整えた生活習慣のイメージ

寝つきをよくする工夫は、夜だけで完結しません。朝の光、朝食、日中の活動量、夕方以降の過ごし方が体内時計に影響します。朝起きたらカーテンを開けて光を浴び、可能であれば朝食をとることは、体内時計を整える助けになります。反対に、朝食を抜く、夜遅くに食べる、就寝直前まで仕事や勉強を続けると、眠る準備が遅れやすくなります。

運動も睡眠に関係します。日中の身体活動は、夜の眠りやすさや睡眠休養感の改善につながる場合があります。ただし、就寝直前の強い運動はかえって覚醒を高めることがあるため、無理に遅い時間へ詰め込むより、日中から夕方にかけて継続しやすい活動を選ぶ方が現実的です。

寝る前の1時間は、脳を休ませる準備時間として扱います。仕事の連絡、強い光の画面、考え込む作業、飲酒による寝落ちは、睡眠の質を下げる要因になることがあります。眠気がないのに無理に布団で眠ろうとすると、「眠れないこと」自体への不安が強まり、さらに寝つきにくくなる場合もあります。眠れないときは、暗めで落ち着ける場所で静かに過ごし、眠気が戻ってから寝床に戻る方法も選択肢になります。

カフェイン・飲酒・スマートフォンは量とタイミングを見直す

就寝前のカフェインとスマートフォン利用を見直すイメージ

睡眠を整えるうえで見落とされやすいのが、嗜好品とデジタル機器の使い方です。コーヒー、緑茶、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、眠気を抑える作用があります。摂取してから時間がたっても影響が残る人がいるため、夕方以降に眠りづらい人は、午後の摂取量や時刻を記録してみると原因に気づきやすくなります。

飲酒は寝つきをよくするように感じられることがありますが、睡眠の後半で眠りを浅くし、中途覚醒を増やすことがあります。寝酒を習慣にすると、量が増えたり、睡眠の質が下がったりする場合があるため、睡眠対策としては勧められません。

スマートフォンやパソコンは、光そのものだけでなく、情報量や通知によって脳を活動状態にしやすい点にも注意が必要です。寝る直前まで仕事のメッセージを見る、動画を見続ける、SNSで感情が動く情報に触れると、寝床に入ってからも考えが止まりにくくなります。完全に使わないことが難しい場合でも、通知を切る、画面を暗くする、寝室に持ち込まない日を作るなど、小さな調整から始められます。

職場の睡眠対策は個人任せにしない

睡眠に配慮した職場のスケジュール管理のイメージ

睡眠不足は個人の努力だけで解決できないことがあります。長時間労働、深夜の連絡、交替制勤務、通勤時間、業務量の偏り、休憩の取りにくさは、睡眠時間と睡眠休養感の両方に影響します。健康経営や職場の生産性を考える場合、睡眠を「本人の自己管理不足」として扱うのではなく、働き方の設計課題として見ることが重要です。

企業で取り組みやすい対策には、勤務間インターバルの確保、深夜・休日連絡のルール化、会議時間の見直し、休憩を取りやすい業務設計、交替制勤務者への健康教育、相談窓口の周知があります。睡眠に関するアンケートを実施する場合は、個人評価や人事査定に使うのではなく、部署単位・集団単位で負荷を把握し、職場環境を改善する目的で扱うことが望まれます。

また、眠気が強い状態での運転、高所作業、機械操作、医療・介護・保育などの安全に関わる業務では、本人の健康だけでなく周囲の安全にも関わります。睡眠対策は福利厚生にとどまらず、安全管理の一部として位置づける必要があります。

症状が続くときは睡眠障害も考えて相談する

睡眠の悩みを相談する医療機関の診察室イメージ

生活習慣を整えても、眠れない、眠っても休養感がない、日中の眠気が強い、居眠りを繰り返すといった状態が続く場合は、睡眠障害が関係している可能性があります。代表的なものには、不眠症、睡眠不足症候群、閉塞性睡眠時無呼吸、むずむず脚症候群、過眠症、睡眠・覚醒リズムの障害などがあります。

特に、いびきが大きい、睡眠中に呼吸が止まると言われた、十分寝たつもりでも日中に強い眠気がある、運転中に眠くなる、朝の頭痛や血圧の問題がある、気分の落ち込みが続くといった場合は、早めに医療機関へ相談することを検討してください。市販薬やサプリメントだけで対応し続けると、背景にある病気の発見が遅れることがあります。

医師に相談するときは、就寝時刻、起床時刻、中途覚醒、昼寝、カフェインや飲酒、勤務時間、日中の眠気、家族から指摘された様子を1〜2週間ほど記録しておくと、状況を伝えやすくなります。睡眠は生活全体とつながっているため、記録は自分を責めるためではなく、改善の手がかりを見つけるために使います。

まとめ:まずは一週間、睡眠を記録して整える

一週間の睡眠記録をつける紙のプランナー

睡眠改善の第一歩は、完璧な生活を目指すことではありません。まずは一週間、就寝時刻、起床時刻、夜中に起きた回数、起床時の休養感、日中の眠気、カフェインと飲酒のタイミングを簡単に記録してみましょう。記録すると、睡眠時間が足りないのか、寝床にいる時間が長すぎるのか、夕方以降の習慣が影響しているのかが見えやすくなります。

成人では6時間以上を目安に必要な睡眠時間を確保し、朝の光、朝食、日中の活動、就寝前のリラックス時間を整えることが基本です。職場では、睡眠を個人の根性論にせず、働き方と安全管理の課題として扱うことが求められます。症状が続き日中の生活に影響している場合は、生活習慣の見直しだけで抱え込まず、医師に相談しましょう。

参考文献

  • 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」令和6年2月、令和6年9月18日一部修正。https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
  • 厚生労働省「睡眠対策」。https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
  • Watson NF, Badr MS, Belenky G, et al. Recommended Amount of Sleep for a Healthy Adult: A Joint Consensus Statement of the American Academy of Sleep Medicine and Sleep Research Society. Journal of Clinical Sleep Medicine. 2015;11(6):591-592. doi:10.5664/jcsm.4758
  • Hirshkowitz M, Whiton K, Albert SM, et al. National Sleep Foundation’s sleep time duration recommendations: methodology and results summary. Sleep Health. 2015;1(1):40-43. doi:10.1016/j.sleh.2014.12.010

この記事を書いた人

磯野しょうご

合同会社minato CEO
柔道整復師として整骨院・スポーツ現場・パーソナルジムの指導に携わる一方、医療・健康分野に特化したWEB制作、オンライン完結型ダイエットサポート、法人向け健康研修、テーピング代理店など複数の事業を展開。